介護保険で購入できる福祉用具一覧と対象条件を徹底解説
- ケア・システム
- 6月17日
- 読了時間: 13分
▶︎1. 介護保険で購入できる福祉用具とは?
1.1 介護保険制度における福祉用具の役割
介護保険制度では、在宅での生活を支えるために、さまざまなサービスが用意されています。その中でも、福祉用具は生活の質を大きく左右する重要な存在です。
たとえば、立ち上がりがつらいと感じたとき、ポータブルトイレや手すりの設置があるだけで、日常生活の不便さがぐっと減ります。 入浴や排泄の介助が必要な場合でも、適切な用具があることで、本人の自立支援や介助者の負担軽減につながります。
介護保険でカバーされる福祉用具は、「貸与」と「購入」に分かれており、状況や目的に応じた使い分けが必要です。
1.2 購入と貸与の違いとは?
福祉用具には大きく分けて2つの提供方法があります。
貸与(レンタル):介護ベッドや車いすなど、比較的高額で一時的な使用が見込まれる用具が対象
購入(販売):使用者ごとの衛生配慮が必要なものや、個別対応が必要な用具が対象
購入対象になるのは、ポータブルトイレや入浴用具、簡易浴槽などです。
これらは、日々の排泄や入浴に直接関わるもので、衛生面や形状の違いから個別に新品を必要とするため、購入扱いとされています。
この違いを理解していないと、必要な用具をレンタルで探してしまったり、保険が適用されないケースも出てきます。
1.3 購入対象となる「特定福祉用具」の定義
介護保険で購入できるのは、「特定福祉用具販売」として定められた品目に限られています。これらは厚生労働省の基準に基づき、次のような特徴があります。
衛生上、貸与に適さない
工事不要で設置できる
日常生活の基本動作(排泄・入浴・移動)をサポートする
具体的には、以下のようなものが対象になります。
腰掛便座(ポータブルトイレ含む)
入浴補助用具(浴槽内いす、入浴台など)
簡易浴槽
移動用リフトのつり具
排泄予測支援機器 など
これらは「購入」対象であり、年額上限10万円(税込)の範囲で介護保険が適用されます。
初めて利用する方にとっては、「何が対象か」「貸与との違いは?」と迷うこともあります。 そのため、まずは制度全体の仕組みと用具ごとの区分を知っておくことが大事です。
▶︎2. 介護保険で購入できる福祉用具の種類
介護保険で「購入」が認められている福祉用具は、「特定福祉用具販売」として国が定めた9品目に限られます。どれも、衛生面や安全性の観点から新品での使用が必要とされており、本人の自立支援と介助者の負担軽減を目的として設計されています。
ここでは、それぞれの用具について、主な種類、利用シーン、注意点まで詳しく解説します。
2.1 対象品目①:腰掛便座や簡易トイレ
排泄は生活の基本。ここに不安があると、外出や就寝もままならなくなります。
そこで活躍するのが、次のような腰掛便座関連の福祉用具です。
主な対象製品
ポータブルトイレ(バケツ式):寝室のそばに設置でき、夜間のトイレ移動が不要に
補高便座:膝の曲げ伸ばしが辛い人でも洋式トイレが楽に
和式→洋式変換便座:和式トイレでも簡単に腰掛け可能に
こんな場面で便利です
夜中にトイレまで歩くのが不安なとき
介助を受けずに排泄したいとき
家族が離れていて一人でトイレに行くことが多いとき
よくある失敗と対策
バケツの洗浄が面倒で使わなくなる
→フタ付きや消臭剤付きのタイプを選ぶと安心です
補高便座が合わずに転倒しかける
→便座の高さと足の着き具合を確認し、調整可能な製品を選びましょう
設置場所のスペース不足
→折りたたみ式やスリム型もあるので事前にサイズを測って選ぶことが大事です
自宅の構造や体の状態に合った便座を選ぶことが、排泄のストレスを軽減する第一歩です。
2.2 対象品目②:入浴補助用具や簡易浴槽
滑りやすく、転倒リスクの高い入浴時。浴室内での事故を防ぎながら、安心して体を洗えるようにサポートするのが入浴用福祉用具です。
主な対象製品
入浴用いす(背もたれ・肘掛けつき)
浴槽内いす:浴槽の中でも安定した姿勢を保てる
浴槽用手すり・バスボード:浴槽への出入りをサポート
すのこ・踏み台:滑り防止+高さ調整に便利
簡易浴槽:工事不要で空気式・折りたたみ式もあり
よくある活用場面
浴槽のまたぎ動作が怖くなったとき
シャワーだけの入浴で寒さを感じるとき
介助者が腰を痛めてしまうリスクを減らしたいとき
よくある失敗と対策
椅子の高さが合わず、逆に不安定になる
→座面の高さ調整機能があるタイプを選ぶと安心です
浴室のサイズに入らなかった
→寸法を測ってから選ぶ/折りたたみ可能なものを検討しましょう
カビ・ぬめりが発生しやすく清掃が大変
→抗菌素材や乾きやすい構造の商品を選び、こまめに乾燥させましょう
入浴用具は毎日使うものだからこそ、使い勝手や清掃性を重視した選び方が大事です。
2.3 対象品目③:移動用リフトや排泄支援機器
近年注目されているのが、移動や排泄をサポートするテクノロジー系福祉用具です。特に在宅介護では、家族の身体的な負担が大きく、こうした用具の活用が進んでいます。
主な対象製品
移動用リフトのつり具部分(体に直接触れる部分)
排泄予測支援機器(排尿のタイミングをセンサーで通知)
利用場面の一例
介護者が一人で体を支えるのが難しくなってきたとき
寝たきりの方をベッドから車いすに安全に移動させたいとき
排泄のタイミングがわからず、失禁を防ぎたいとき
よくある失敗と対策
つり具が身体に合わず不快感が出る
→事前にフィッティングをして、専門員と相談するのがベストです
予測機器が高価で自己負担が多くなる
→介護保険の補助額と実費を事前に確認しましょう
使い方が難しく、結局使わなくなる
→購入前に使用説明を受ける/簡単操作の製品を選ぶことがポイント
先端機器も「必要性」「使いやすさ」「経済性」の3点から判断することが、失敗を防ぐコツです。
介護保険で購入できる福祉用具は、生活の質を大きく左右する重要なサポートツールです。
それぞれの製品には利用シーンと注意点があるので、制度だけでなく「自分の生活にどう活かせるか」を意識して選ぶことが大事です。
▶︎3. 介護保険で福祉用具を購入する際の条件と注意点
介護保険で福祉用具を購入するには、いくつかの条件や制限があります。
対象者や購入金額の上限、事業者の選び方など、見落としがちなポイントも多いです。
ここでは、購入に関する「3つの基本ルール」をしっかり押さえておきましょう。
3.1 利用できる人の条件とは?
まず、介護保険で福祉用具を購入できるのは、以下の条件を満たす方です。
要介護認定(要支援1〜要介護5)を受けていること
自宅で生活していること(施設入所中は対象外)
購入が必要と認められていること(ケアマネジャーのケアプランに基づく)
たとえば、通所リハビリや訪問介護を利用している在宅の高齢者が、排泄や入浴に不便を感じている場合に、ポータブルトイレや入浴用いすの購入が認められます。
要介護認定を受けていない人や、施設に入所している方は対象外なので注意が必要です。
3.2 年度ごとの支給限度額に注意
介護保険では、福祉用具の購入費用に対して年間10万円(税込)までが上限として定められています。
この上限は「毎年度(4月1日〜翌年3月31日)」でリセットされます。
購入金額のうち、自己負担は1割〜3割(所得により異なる)で、残りは介護保険から支給されます。
よくある失敗として、以下のようなケースがあります。
同じ年度内に複数回購入して、合計が10万円を超えた
高価な用具を購入したが、自己負担が予想より多かった
購入タイミングを誤って、翌年度の支給枠に食い込んだ
こうした失敗を防ぐには、購入前にケアマネジャーと相談し、見積書をもとに負担額を計算しておくことが大切です。
3.3 指定事業者以外から購入すると保険適用外に
介護保険での福祉用具購入には、「指定事業者からの購入」が絶対条件です。
この「特定福祉用具販売事業者」とは、市町村から正式に認定された販売業者のことです。
以下のような失敗例があります。
通販サイトや一般のホームセンターで購入してしまった
近所のリサイクルショップで安く手に入れた
知人に譲ってもらい領収書を出してもらえなかった
このような場合、介護保険は一切適用されず、全額自己負担になります。
指定事業者かどうかは、市町村の介護保険課やケアマネジャーに確認できます。購入前に必ずチェックしておくようにしましょう。
福祉用具を購入する際は、「誰が使えるのか」「いくらまで使えるのか」「どこで買えばいいのか」をしっかり確認しておくことが大事です。
▶︎4. 福祉用具の購入手続きと介護保険の申請方法
介護保険で福祉用具を購入するには、事前に準備すべき書類や申請手続きがあります。
また、支払い方法も2種類あるため、それぞれの特徴を把握しておくことが大切です。
ここでは、購入の流れや必要書類について、わかりやすく解説します。
4.1 「償還払い」と「受領委任払い」の違い
福祉用具を購入する際、介護保険を利用した支払い方法には、以下の2つがあります。
● 償還払い(しょうかんばらい)
利用者がいったん全額を支払い、後日、保険分が払い戻される方式
市町村への申請後、2〜3ヶ月で還付されるのが一般的
● 受領委任払い
購入時に自己負担分(1〜3割)だけを支払い、残りは市町村が事業者へ直接支払う方式
事前に「受領委任払い届出書」の提出が必要
たとえば、10万円の福祉用具を1割負担で購入する場合、
償還払いならいったん10万円を支払い → 約9万円が後日返金
受領委任払いなら、最初から1万円だけを支払えばOKという違いがあります。
「まとまったお金を用意するのが難しい」という方には、受領委任払いが便利です。
4.2 購入までのステップを詳しく解説
福祉用具購入における基本的な流れは次の通りです。
ケアマネジャーに相談
ケアプランに福祉用具購入を組み込むための相談を行う
福祉用具の選定・見積り
指定事業者と相談し、必要な用具と金額を確認
市町村へ購入申請(必要書類提出)
償還払い or 受領委任払いに応じた手続き
購入・納品
実際に用具を購入
支払いと給付
償還払い:全額支払って後日返金
受領委任払い:自己負担分のみ支払う
スムーズに進めるためには、申請前の見積もりと相談がカギになります。
4.3 必要な書類と申請先のまとめ
購入手続きの際には、以下の書類を揃える必要があります。
書類名 | 内容/用途 |
購入申請書類 | 市町村の所定様式(福祉用具購入申請書) |
領収書 | 実際の支払い額を証明するもの |
商品カタログ・パンフレット | 購入した用具の仕様や価格がわかる資料 |
ケアプラン写し | ケアマネジャーが作成したサービス計画書 |
受領委任払い届出書 | 受領委任払いを利用する場合のみ必要 |
申請は、住民票のある市町村の介護保険課へ提出します。
郵送や窓口持参など、自治体によって手続き方法が異なるため、事前にホームページで確認しておくと安心です。
事前準備と制度理解があれば、福祉用具の購入はスムーズに進められます。
「どこに申請する?」「いつ払う?」など不安な点がある場合は、ケアマネジャーや販売事業者に遠慮なく相談しましょう。
▶︎5. 介護保険で福祉用具を購入するときの失敗例と対策
介護保険を使って福祉用具を購入する際、制度の理解不足や手続きミスによって自己負担が増えたり、支給が受けられなくなることがあります。
ここでは、よくある失敗例を3つ紹介し、それぞれの具体的な対策をお伝えします。
5.1 「貸与」と間違えて購入してしまう
最も多いのが、「貸与対象の用具」を誤って購入してしまうパターンです。
よくある失敗
介護ベッドを購入したが、実は貸与対象で保険適用外だった
車いすをネットで購入し、全額自己負担になった
これらは高額な商品であることが多く、自己負担も大きくなりがちです。
対策
購入する前に、用具が「購入対象」か「貸与対象」かを必ず確認しましょう。
不明な場合は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談するのが一番確実です。
5.2 対象外の製品を購入してしまう
次に多いのが、制度の対象外となる福祉用具を購入してしまうケースです。
よくある失敗
トイレ用の手すりを設置したが、壁に工事が必要で購入対象外だった
知人から中古品を買い、領収書が出せず支給申請ができなかった
デザイン性を優先して選んだ結果、介護保険の基準を満たしていなかった
対策
購入前にカタログや仕様書で「保険対象」であることを確認する
指定販売事業者を通じて購入する
パンフレットや説明資料を残しておく(申請時に必要)
「使いやすそうだから」「安かったから」と自己判断せず、事前確認を徹底しましょう。
5.3 支給上限を超えて自己負担が増える
介護保険には購入費の年間支給限度額(10万円/税込)があります。
この制度を知らずに買いすぎてしまうと、保険の対象外になり、全額自己負担になってしまうことも。
よくある失敗
年度内に2回購入し、合計で12万円になってしまった
残り支給枠を確認せずに高額な商品を購入した
ケアマネジャーに相談せずに進めたため、保険適用が受けられなかった
対策
購入前に「今年の残り支給枠」がいくらあるか確認する
ケアマネジャーに事前相談して、ケアプランに組み込んでもらう
複数の用具をまとめて購入する場合は、金額を精査して調整する
「あと2万円分使えると思っていたのに、実は使い切っていた」というトラブルは本当に多いです。
事前の確認と相談が、失敗を防ぐ最大のポイントです。
介護保険の制度は複雑ですが、制度のルールを知っておけば、無駄な出費やトラブルは避けられます。
▶︎6. まとめ:福祉用具の購入を介護保険で賢く活用するために
ここまで、介護保険で購入できる福祉用具の種類や手続き、注意点について詳しく紹介してきました。 最後に、重要なポイントを整理しながら、今後の活用に役立つ視点をお伝えします。
6.1 ポイントを振り返り
介護保険を使って福祉用具を購入するうえで、押さえておきたいポイントは次の3つです。
購入対象の福祉用具は「特定福祉用具」のみ
年度ごとの支給上限は10万円まで(自己負担は1〜3割)
購入は「指定販売事業者」からのみOK
これらを知らないまま進めると、「保険が使えなかった」「自己負担が増えた」などのトラブルにつながります。
安心して購入するには、「制度の仕組み」と「対象となる用具の条件」をきちんと理解しておくことが大事です。
6.2 事前の相談で安心して購入を
介護保険の仕組みはやや複雑に感じるかもしれませんが、事前にケアマネジャーや指定事業者に相談すれば、安心して進められます。
たとえば、こんな場面が想定されます。
「この用具は保険が使えるのか知りたい」
「残りの支給限度額を教えてほしい」
「購入と貸与、どちらがいいか迷っている」
こうした疑問は、自己判断せず専門家に確認するのが一番です。
ケアマネジャーとの連携を取ることで、購入がスムーズになるだけでなく、必要な書類や申請もスピーディに対応できます。
6.3 困ったときは地域の専門業者に相談しよう
福祉用具は日常生活の質を左右する重要な道具です。
身体状況や生活環境に合ったものを選ばなければ、せっかく購入しても使いこなせないこともあります。
そこで頼りになるのが、地域にある指定福祉用具販売事業者です。
実際の自宅の間取りや動線に合う用具を提案してくれる
商品の取り扱いや手続きについて丁寧に説明してくれる
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「選び方がわからない」「使い方が心配」そんなときは、無理せずプロに頼ってください。 きっと、生活がもっと快適に、安全に変わっていきます。
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